大判例

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仙台高等裁判所 昭和25年(ネ)230号 判決

控訴代理人は「原判決を取消す。被控訴人が岩手県岩手郡玉山村大字川又字西宇登第十四地割十七番の五山林三町一反四畝四歩のうち二町歩につき、昭年二十三年二月十五日発行の岩手に第二五号買収令書を以てした買収処分を取消す訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決を求め、被控訴代理人は控訴棄却の判決を求めた。

当事者双方の事実上の主張は、控訴代理人において、

一、控訴人山崎権太郎は昭和二十六年五月二十四日死亡し、その長男権蔵が相続により権太郎の権義を承継した。

二、本件土地につき未墾地買収計画のたてられたのは昭和二十二年七月二十日であるが、昭和二十一年法第四三号自作農創設特別措置法(以下自創法又は法という)によると、牧野も一律に未墾地買収の対象となり得るようにみえるけれども、右法第四三号の趣旨は必ずしもそうではなく、牧野が営農養畜に必要な限りは右の法律によつても未墾地として買収してはならない趣旨である。昭和二十二年法第二四一号改正自創法第三十条第一項第一号は右の趣旨を明確にしたに過ぎない。しかも本件買収令書の発行せられたのは右改正法施行後たる昭和二十三年二月十五日であるから、本件未墾地買収は右改正法により律せられるべきである。従つて本件買収処分は違法である。

と述べ、被控訴代理人において、

一、本件土地は昭和二十一年法第四三号自創法第三十条第一項第一号にいわゆる農地以外の土地で開拓適地であつたので、玉山村農地委員会は附近の土地と併せ開発すべく買収計画を立てたもので、計画を立てたのは昭和二十二年七月二十日、縦覧期間は同月二十一日から翌月九日まで、買収の時期は同年十二月二日である。控訴人は右計画に対し同年八月二日異議を申立てたが却下され、同年八月二十八日訴願したが、これまた同年十月一日棄却され同年十二月二日右買収計画が岩手県農地委員会において承認され、昭和二十三年二月二十六日買収令書が交付された。以上のとおり本件土地についての買収計画から承認に至るまでの一連の手続は、当時施行されていた昭和二十一年法律第四三号の自創法に基いて行われ、唯買収令書の交付だけが改正法の施行後に行われたに過ぎない。しかし令書の交付が前示法条の改正後に行われたからといつて、政正前に昭和二十二年十二月二日買収時期とする買収計画その他令書交付以外の一連の手続が完了している以上、本件買収処分を違法なりとすることはできない。

二、のみならず、本件係争土地は昭和二十二年法第二四一号によつて改正された自創法にいう牧野にはあたらないもので、牧野以外の土地で附近の農地とあわせ開発するを相当とする土地である。

と述べたほか、原判決事実摘示と同じであるから、ここにこれを引用する。(証拠省略)

三、理  由

控訴人の前主山崎権太郎の所有であつた本件山林三町一反四畝四歩のうち二町歩につき、玉山村農地委員会が未墾地買収計画を立て、これに対して右権太郎から異議及び訴願をしたがいずれも容れられず、結局被控訴人において右買収計画に基き昭和二十三年二月十五日附の買収令書を同年二月二十六日右権太郎に交付して買収処分をしたことは当事者間に争がなく、控訴人が昭和二十六年五月二十四日右権太郎の死亡により相続したことは被控訴人の明に争わないところである。

本件未墾地買収計画が昭和二十一年法律第四三号自創法(以下旧法という)施行当時に樹立公告されたものであることは控訴人も争わないところであつて、成立に争のない甲第一号証、乙第一、二号証、原審証人本山繁男、沢又権蔵、米内敬三、当審証人上野兼吉の各証言に徴すれば、右買収計画は昭和二十二年七月二十日に、当時施行されていた旧自創法第三十条第一項第一号により同年十二月二日を買収の時期として立てられ、その後被控訴人主張のような異議訴願の手続を経て確定し、同年十二月初頃岩手県農地委員会の承認を経たものであることが認められる。而して右旧法第三十条第一項第一号には「農地以外の土地で農地の開発に供しようとするもの」とあつて、同号の規定が「農地及び牧野以外の土地で農地の開発に供しようとするもの」と改正されたのは昭和二十二年法律第二四一号(以下改正法という)によるもので、右改正法の施行されたのは同年十二月二十六日からである。即ち本件未墾地買収計画は旧法施行当時に定められたものであるから、特段の規定のない限りその適否は旧法の規定によつて判断すべきであり、このことは本件の場合のように買収計画に基く買収処分が改正法の施行後でされたときでも同様というべきである。けだし買収計画につき異議訴願の手続を経た後、県農地委員会の承認を経たものである以上、知事は買収令書を交付してその計画に定められた農地を買収しなければならないからである(自創法第三四条、第九条、第三八条参照)。而して原審証人石川敬治(第一、二回)、山崎権蔵、米沢久吉、当審証人岩崎栄吉、大森万次郎の各証言によれば、本件買収の対象とされた土地は前記買収計画当時採草の目的に供されていたもので改正法にいう牧野にあたるものであつたことを認め得るけれども、旧法第三十条第一項第一号の「農地以外の土地」には牧野を含む趣旨と解せられ、且旧法には牧野につき地主の保有し得べき限度に関する規定もなかつたのであるから、本件土地が牧野にあたるからといつてその買収計画が違法なりとはいえない。

次に控訴人は本件土地は控訴人の営農養畜上必要欠くべからざる牧野であると主張するが、原審証人本山繁男、米内敬三、当審証人上野兼吉、大森万次郎の各証言、原審証人山崎権蔵及び当審における控訴人本人の供述の一部を綜合すれば、控訴人方では田六反歩、畑一町九反位を耕作し、なお馬を平均五頭位飼育しているが、本件土地を除いてもなお約十七町歩の採草地をもち、他に貸している部分もあつて、本件土地の如きも控訴人自ら採草することは稀で、むしろ近隣者の採草に委せていたほどで、本件土地が買収されても控訴人方の営農養畜上さしたる支障はないものと認められる。原審証人石川敬治、米沢久吉、山崎権蔵の各証言中及び当審における控訴人本人の供述中、右認定に牴触する部分は採用し難く、他に右認定を左右するに足る証拠はない。

以上の次第で、本件買収が違法なりとする控訴人の主張は採用し得ず、右と同一趣旨の下に控訴人の本訴請求を棄却した原判決は相当で、本件控訴は理由がない。よつて民事訴訟法第三八四条、第九五条、第八九条により主文のとおり判決する。

(裁判官 谷本仙一郎 村木達夫 石井義彦)

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